NVIDIAジェンセン・フアンCEO、中国向けH20後継チップ輸出を予告…自社株追加売却も実施
- なぜフアンCEOは中国市場にこだわるのか?
- ホッパー設計の限界と新たな可能性
- トランプ政権との微妙な駆け引き
- 1億9000万ドルの自社株売却戦略
- 中国の技術力に対する意外な評価
- 地政学リスクを超えるビジネス戦略

NVIDIAのジェンセン・フアンCEOが中国市場に向けた大胆な戦略を明らかにした。H20 AIチップの後継製品輸出を約束するとともに、自社株の追加売却を継続中だ。中国市場の重要性を強調する一方、米中技術摩擦の狭間で巧みなバランス感覚を見せている。
なぜフアンCEOは中国市場にこだわるのか?
7月16日、北京で行われた会見でフアンCEOは「H20を超える性能のAIチップを中国市場に提供する」と宣言。中国がNVIDIAの総売上高の10%以上を占める重要市場であることに加え、同国のAIチップ市場が2~3年以内に500億ドル規模に成長するとの見通しを示した。米政府の輸出規制が続く中、「技術覇権競争で中国を無視するのはビジネス的に自殺行為だ」と業界関係者は指摘する。
ホッパー設計の限界と新たな可能性
現在中国に輸出されているH20チップは、米政府の規制回避のために意図的に性能を抑えた「規制対応版」。フアンCEOは「ホッパー設計ベースのH20でも優れた性能を発揮するが、今後数年間でさらに優れた技術が登場する」と説明。フィナンシャル・タイムズによれば、NVIDIAは既にBlackWell RTX Pro6000チップをベースとした中国向け新型チップを開発中で、早ければ9月にもリリースされる見込みだ。
トランプ政権との微妙な駆け引き
興味深いのは政治的な動きだ。フアンCEOは先週トランプ大統領と面会し、中国出張の意向を伝えたという。「うまくやってこい」との返事があったと明かし、政権側がH20チップ輸出禁止を解除した背景には「中国軍転用リスクは過大評価されている」との判断があったと説明。あるアナリストは「NVIDIAは地政学リスクを最小化するため、両政府に対して絶妙なロビー活動を展開している」と分析する。
1億9000万ドルの自社株売却戦略
企業行動も注目される。SEC提出書類によれば、フアンCEOは今年すでに120万株(約1億9000万ドル相当)の自社株を売却。今回追加で22万5000株(約3700万ドル相当)を処分した。3月に600万株までの売却計画を公表して以降の動きで、時価総額4兆ドル到達を受けた利益確定と見られる。BTCCアナリストチームは「創業者の株式売却は必ずしもネガティブサインではなく、分散投資の一環と解釈すべき」と指摘する。
中国の技術力に対する意外な評価
会見での発言も興味深い。フアンCEOは「現金依存の米国と異なり、中国はスマート決済が浸透している」と指摘。「中国企業はH20チップでディープシークのAIモデルR1を完成させ、世界を驚かせた」と評価した。この発言は、中国技術力を過小評価する西側の認識に一石を投じるものだ。
地政学リスクを超えるビジネス戦略
NVIDIAの中国戦略は単純ではない。一方で規制の隙間を縫った製品開発を進め、他方で政府間調整を図る。フアンCEOの「中国AI市場が成長を続ける限り、NVIDIAは関与し続ける」との発言は、グローバル企業のジレンンマと覚悟を表している。今後の展開から目が離せない。