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RobinhoodとCoinbaseが予測市場に本格参入──ネット証券と仮想通貨取引所の境界が溶け始めた

RobinhoodとCoinbaseが予測市場に本格参入──ネット証券と仮想通貨取引所の境界が溶け始めた

Published:
2025-12-23 09:00:06
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金融アプリと暗号取引所が、同じ土俵で戦う時代が来た。

RobinhoodとCoinbaseが、政治やスポーツの結果を賭ける「予測市場」への本格参入を相次いで発表。これは単なる新機能の追加ではない。両社が提供する株式、オプション、仮想通貨、そして今や予測市場というサービス群が、一つの「総合金融スーパーアプリ」へと収斂しつつあることを示す明確なシグナルだ。ユーザーは、資産クラスや商品の垣根を意識することなく、一つのプラットフォームで全ての投機的欲求を満たせるようになる。

伝統的な壁が崩れる

長年、ネット証券会社と仮想通貨取引所は、規制や取り扱う資産の違いから、別々の領域を歩んできた。しかし、Robinhoodが暗号取引を強化し、Coinbaseが株式取引のライセンス取得を模索する中、その境界線は急速に曖昧になっている。予測市場への進出は、この「領域侵犯」戦略の最新章に他ならない。両社は、ユーザーの「画面時間」と「手数料」を巡って、直接競争する局面を増やしている。

規制という名のモグラ叩き

この動きは、各国の規制当局に新たな課題を投げかける。日本の金融庁(FSA)のように、証券と仮想通貨を別々のフレームワークで監督してきた当局は、一つの企業グループ内でこれら全てのサービスが提供される世界に対応できるのか。規制の隙間をビジネスチャンスと見なすスタートアップのイノベーションは、常に当局の対応を一歩先を行く──これは金融業界で繰り返されてきた、ある種退屈な綱引きだ。

顧客は「エンタメ」を求めている

核心は、現代の投資家、特に若年層の期待の変化にある。彼らは厳格な「資産形成」だけを求めてはいない。ゲーミフィケーションされたインターフェース、ソーシャル機能、そして事件や試合の行方に「賭ける」スリルを含めた、総合的な「金融エンターテインメント」を消費している。プラットフォームは、ユーザーを飽きさせず、画面に留まらせるための新たな「コンテンツ」として、予測市場のような商品を投入しているのだ。

未来は「所有」から「アクセス」へ

この流れが示す究極の帰結は、資産の「所有」そのものの重要性が後退する可能性だ。ユーザーは、特定の株や暗号を「保有」することにこだわらず、あらゆる事象の価格変動や結果に対してポジションを取れる「アクセス」そのものを求める。プラットフォームは、その全てのゲートキーパーとなる。あるアナリストが冷ややかに指摘したように、「次のバブルがどこで発生しようと、手数料を徴収するのは結局、これらの仲介業者だ」。

RobinhoodとCoinbaseの動きは、金融サービスがかつてない速度で再定義されていることの証左だ。勝者は、最も多くの商品を揃えた小売店ではなく、ユーザーの注意を最も長く捉え、その全ての活動から手数料を吸い上げる生態系を構築した者となる。

RobinhoodとCoinbase、予測市場へ本格参入──揺らぐネット証券と暗号資産取引所の境界【MCB FinTechカタログ通信】

2025年12月16日、米ネット証券大手のRobinhoodが、NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)を対象とした新たな予測市場機能の提供を開始したとの報道がありました。続く12月17日には、米仮想通貨取引所大手のCoinbaseも、予測市場プラットフォームKalshiとの提携を通じて、予測市場への参入を正式に発表しています。

ネット証券と仮想通貨取引所という異なる背景を持つ2社が、時を同じくして「予測市場(Prediction MARket)」という新たな領域へ踏み出したこの動きについて、その詳細と背景にある戦略、そして規制を巡る構造を見ていきましょう。

※本記事の内容は、マネックスクリプトバンクが週次で配信している、FinTech・Web3の注目トピックスを解説するニュースレター「MCB FinTechカタログ通信」の抜粋です。マネックスクリプトバンクが運営する資料請求サイト「MCB FinTechカタログ」にて、過去の注目ニュース解説記事を公開していますので、ぜひご覧ください。

予測市場の仕組みと米国における法的位置づけ

今回のニュースを理解する上で重要なのが、「予測市場」の定義と法的な枠組みです。予測市場とは、選挙結果や経済指標、スポーツの勝敗といった将来の出来事の結果を、「Yes/No」などの形式でブロックチェーン上で売買する市場のことです。

POLymarketや、Kalshiなどが主要な予測市場プラットフォームとして挙げられます。

予測市場では、ブックメーカーが一方的にオッズを提示するスポーツベッティングなどと異なり、株式市場のように参加者同士の需給によって価格(確率)がリアルタイムで変動します。今回両社がバックエンドとして採用しているKalshiは、米商品先物取引委員会(CFTC)の規制下にある「指定契約市場(Designated Contract Market, DCM)」として運営されており、法的にはギャンブルではなくデリバティブ取引の一種として扱われます。

RobinhoodやCoinbaseは、このCFTC規制下の取引所インフラを利用し、自社のアプリをフロントエンドとしてユーザーに提供することで、実質的なスポーツベッティングに近い体験を、金融商品として提供しようとしているのです。

スポーツベッティング領域への接近を図るRobinhood

Robinhoodが12月16日に発表した機能強化は、スポーツファンの取り込みを強く意識したものです。具体的には、NFLの試合結果や得点総数などをユーザーが自由に組み合わせる「Preset Combos」機能や、特定の選手がタッチダウンを決めるかどうかといった個人のパフォーマンスに基づく「PLAYER Contracts」機能が新たに導入されています。

これにより、ユーザー体験は既存のスポーツベッティングと遜色のないものとなります。同社の予測市場事業はすでに年間収益1億ドル規模に達しており、11月の取引件数は30億件を超え、前月比約20%の成長を見せています。

「Everything Exchange」構想を展開するCoinbase

一方、Coinbaseの戦略はより包括的です。同社は12月17日の発表で「Everything Exchange」というビジョンを掲げ、予測市場の提供はその一部であると位置づけています。

Coinbaseはこの日、予測市場に加え、複数の新機能や戦略を発表しました。特筆すべきは、米国ユーザー向けに株式やETFの取引機能を開放し、仮想通貨と伝統的な金融資産を同一アプリ内で統合管理できる環境を整備した点です。さらに、Solana上のDEXアグリゲーターであるJupiterを統合し、DEXを通じたオンチェーン取引の対象をSolanaチェーン上にも拡大することを発表しています。加えて、AIによる資産運用アドバイザー機能も導入するなど、単なる仮想通貨取引所から、株式、デリバティブ、予測市場、そしてオンチェーン取引までを網羅する総合金融プラットフォームへの転換を図っています。

予測市場は誰が規制すべきか

この市場拡大において最大の障壁となっているのが、州規制当局との対立です。Coinbaseは12月19日、予測市場の提供開始に合わせ、ミシガン、イリノイ、コネチカットの3州を提訴しました。

争点となるのは、「予測市場は誰が規制すべきか」という管轄権の問題です。Coinbase側は、予測市場が連邦法である商品取引所法(COMmodity Exchange Act, CEA)に基づき、CFTCが排他的な管轄権を持つコモディティ取引であると主張しています。

これに対し、一部の州規制当局は、スポーツの結果に基づく金銭の授受は州法における「ギャンブル」に該当し、州のライセンスが必要であるとの立場をとっています。コネチカット州などは実際にKalshiやRobinhoodに対し、無許可のスポーツベッティングを提供しているとして12月3日に業務停止命令を発令しています。Coinbaseは、予測市場がカジノのように「ブックメーカーが勝つ」仕組みではなく、買い手と売り手をマッチングする中立的な取引所であることを強調し、州法の適用除外を求めています。

考察

RobinhoodとCoinbaseの動きは、ネット証券と仮想通貨取引所という金融サービスの境界が急速に曖昧になりつつある現状を浮き彫りにしています。両社はいずれも、株式やETF、仮想通貨に加え、予測市場を取り込み、金融サービスの総合プラットフォーム化を推し進めています。

しかし、現在進行中である提訴の結果によっては、両社の戦略について転換が求められるかもしれません。もし司法が「予測市場は連邦法(CFTC)の管轄であり、州のギャンブル規制は及ばない」との判断を下せば、米国全体で連邦規制に準拠した市場が確立されることになるでしょう。一方で州側の主張が認められた場合は、サービス提供地域が分断され、事業モデルの修正を余儀なくされる可能性があります。

今後、米国のFinTech事業者が予測市場への参入を拡大するかは、この訴訟の行方によって左右される可能性があります。

|文:宮本航歩
|トップ画像:ニューヨーク市長選でのKalshiの広告(Shutterstock)

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