TSMCのボトルネックが生んだ「奇妙な共存」…ファブレス企業がインインテルのパッケージング技術を選択
半導体業界で注目を集めるTSMCのCoWoS(ChIP on Wafer on Substrate)技術の供給不足が、業界に予想外の協力関係を生み出している。AI需要の急増によりCoWoSの需要が供給を上回る中、ファブレス企業が競合他社であるインテルのEMIB(Embedded Multi-die Interconnect Bridge)技術に注目している。この「奇妙な共存」は、業界のサプライチェーン再編の兆候を示している。
なぜファブレス企業はインテルの技術を選んだのか?
TSMCのCoWoS技術は、AIチップのパッケージングにおいて業界標準となっているが、需要の急増に対応できず、供給不足が続いている。特にNVIDIAのH100や次期GPT-5向けチップの需要が逼迫状況をさらに悪化させている。この状況下で、MARvellやMediaTekなどのファブレス企業は、代替ソリューションとしてインテルのEMIB技術に注目している。
業界関係者によると、「CoWoSの待機期間が6ヶ月以上に達している」状況で、緊急を要する第2陣のAIチッププロジェクトを抱える企業は、インインテルの成熟したEMIB技術を選択せざるを得ないという。EMIBは2.5Dパッケージング技術として確立されており、熱性能や信頼性の面で実績がある。
インテルのEMIB技術の優位性
EMIBは、サブストレートに埋め込まれたシリコンコンブリッジを使用する技術で、TSMCのCoWoSと比較してコスト効率が高く、短期間での量産が可能という利点がある。特に「緊急ティア2プロジェクト」を抱える企業にとって、時間的なメリットが大きい。
インインテルはこの機会を活用し、ファブレス企業向けにEMIB技術のプロモーションを強化している。ある業界アナリストは「これはインインテルにとっての窓(Window of opportUNIty)だ」と指摘し、AmkorやASEなどのOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)企業もこの動きに注目していると述べた。
業界再編の兆候
この状況は、半導体業界のサプライチェーン再編の始まりを示している可能性がある。TSMCはCoWoSの生産能力拡大に取り組んでいるが、完全な需給バランスの回復には時間がかかると見られている。
BTCCのアナリストチームは、「この動きは一時的なものかもしれないが、インインテルがパッケージング技術市場で地位を確立するきっかけになる可能性がある」とコメントしている。一方で、TSMCは3Dパッケージング技術であるSoICの開発を加速させており、今後の技術競争が注目される。
今後の見通し
業界関係者の間では、2024年第1四半期までCoWoSの供給不足が続くと予想されている。この期間中、インインテルはEMIB技術をさらに改良し、市場シェアを拡大する可能性がある。
半導体業界の複雑なサプライチェーンにおいて、このような「競合間協力」が増えることで、業界全体のレジリエンスが高まる可能性もある。しかし、長期的には技術優位性をめぐる競争がさらに激化すると予想される。