中国国営造船所との契約で安全保障リスク懸念 カナダ・ブリティッシュコロンビア州で政治的反発
カナダ・ブリティッシュコロンビア(BC)州政府が中国国営造船所と締結した大型フェリー建造契約をめぐり、安全保障上の懸念が拡大している。中国人民解放軍と直接関係のある企業との取引に、連邦政府や野党から強い反対の声が上がっているが、BC州首相は契約履行の方針を堅持している。
中国人民解放軍関連企業との契約に安全保障懸念
BC州の公営フェリー運営会社「BCフェリー」は先月、中国国営の威海造船所と4隻のフェリー建造契約を締結した。しかし、この造船所の親会社である中国招商局グループが中国人民解放軍と密接な関係にあることから、国家機密漏洩の危険性が指摘されている。
BC州保守党のハーマン・バング議員は「文字通り共産軍に資金を提供しているようなものだ」と強く批判。特に「船舶に搭載される技術情報が中国側に渡る可能性は重大な懸念材料」と述べ、契約中止を要求している。

強制労働問題と「一帯一路」参加の懸念
さらに問題を複雑にしているのは、同造船所が中国政府の「一帯一路」構想に積極的に関与している点だ。バング議員は「少数民族や反体制派、政治犯などを対象とした強制労働が使用されている可能性がある」と懸念を表明。
中国招商局グループ側は「児童労働や強制労働の根絶に尽力しており、国際労働法規を遵守している」と反論しているが、国際社会の疑念は消えていない。
国内造船所の活用と炭素税問題
バング議員は「カナダ国内の造船所で建造可能」と主張。特にBC州のシーズパン造船所が2028年後半から建造を開始し、2032年頃に引き渡せるとの見解を示した。
一方、BCフェリーは中国造船所による新造船が2029年から2031年に就航予定と発表。シーズパン社のデイブ・ハグリーブス上級副社長は「老朽化した船隊を考慮すれば、代替船舶の早期確保が必要」と述べている。
バング議員は、カナダ企業が契約に参加しなかった理由の一つとして産業炭素税を挙げ「他の競合他社が炭素税を支払わない中で、カナダ企業だけが負担するのは不公平」と指摘した。
連邦政府の反対と100億ドル融資論争
連邦自由党のクリスティア・フリーランド副首相兼財務相は中国造船所選定について「大きな驚きと失望」を表明。関税緊張、国家安全保障リスク、カナダ企業優先の必要性を指摘した。
さらに論争に拍車をかけたのが、カナダインフラ銀行がBCフェリーに100億ドルの融資を決定したこと。保守党は「カナダドルは外国国営企業ではなく国内産業を支援すべき」と強く反発している。
BC州首相の「契約履行」堅持姿勢
デイビッド・エビーBC州首相は中国造船所選択が最善策ではなかったと認めつつも、「既に契約を結んでおり、新造船が急務の状況で最初から業者を探し直すには時間と費用がかかりすぎる」として、現行契約の継続を主張している。
よくある質問
なぜ中国の造船所が選ばれたのですか?
BCフェリーは「厳格な国際調達プロセス」に基づき決定したと説明。中国造船所を選択することで約12億ドル(約1兆6500億円)のコスト削減が見込めるとしている。
カナダ国内で建造できない理由は?
産業炭素税の負担やスケジュール調整の問題が指摘されています。保守党議員らは国内造船所の活用可能性を主張していますが、州政府は時間とコスト面で難しいと判断しています。
安全保障リスクの具体的な内容は?
中国人民解放軍と関連のある企業が建造に関わることで、船舶に搭載される技術情報が中国側に渡る可能性や、港湾インフラへのアクセス権問題などが懸念されています。