ミレイ大統領の仮想通貨騒動―巨額損失でも倫理スキャンダル回避
政界を揺るがした仮想通貨関連の損失事件が新たな展開を見せている。大統領周辺の取引で巨額の資金が蒸発したにもかかわらず、倫理規定違反は確認されず―当局の調査結果が波紋を広げている。
金融当局関係者は「損失規模は歴代政権でも類を見ない水準」と指摘する一方、取引記録からは「個人投資としての範疇を逸脱した証拠は見当たらない」と結論。市場関係者からは「政治家の『教育目的』取引とやらが、また一般投資家の懐を痛めつけた典型例だ」との冷ややかな声も。
ミレイ大統領の疑惑
この問題は2025年2月14日、ミレイ大統領が自身のX(旧ツイッター)アカウントで仮想通貨LIBRAを宣伝し、購入用のスマートコントラクトへのリンクを投稿したことに端を発する。
投稿後、トークン価格は数時間でほぼゼロから5ドルまで急騰し、時価総額は45億ドルに達した。
しかし、供給量の70%を保有していた創設者らが保有分を売却したことで価格は90%暴落し、多くの投資家が甚大な損失を被った。
この事態を受け、野党からは大統領が「パンプ・アンド・ダンプ」と呼ばれる価格操作に加担したとして、弾劾を求める声が上がった。
ミレイ大統領自身は、倫理規定違反の疑惑を晴らすため、汚職防止局に調査を要請していた。
汚職防止局は、ミレイ大統領の行動を精査した結果、今回の投稿は個人の資格で行われたものであり、政府の公式な声明ではないと判断した。
連邦政府の資源が使用されておらず、公務員倫理法にも違反していない点が判断の根拠となった。
アルゼンチンの公務員倫理法では、公人の私的な行動と公務を明確に区別している。今回の決定は、この法的枠組みに沿ったもので、大統領が個人のプラットフォームを利用した点が重視された形だ。
この判断を受け、事件を調査するために一時的に設置されていた特別調査チーム(UTI)は解散された。
政府の声明ではない個人の発言が市場に与える影響の大きさは、仮想通貨市場の特性を物語っている。
残る刑事捜査と国際的な訴訟
汚職防止局が倫理違反の問題に終止符を打った一方で、法的な追及が終わったわけではない。
アルゼンチン国内では、証券法違反や市場操作の疑いで別途刑事捜査が進行中である。
このような価格操作のリスクは、新興のトークンだけでなく、時価総額最大のビットコイン(BTC)のような主要な通貨においても常に警戒されている。
さらに、この問題は国境を越えて広がっている。米国やスペインでは、市場操作や投資家への詐欺を訴える集団訴訟が提起されており、国際的な法廷闘争が続いている。
関係者によると、トークンの創設者らはWeb3投資・マーケティング会社のケルシア・ベンチャーズと関連があり、ミレイ大統領の投稿を利用して価格のピーク時に保有分を売却し、暴落を加速させたと見られている。
今回の決定は、公人が仮想通貨を推奨する際のリスクと規制の難しさを浮き彫りにした。国境を越えて展開される仮想通貨のガバナンスを巡る法的な課題が、改めて示されたと言えるだろう。
特に、プロジェクトの初期段階で資金を調達するICO仮想通貨は、このようなボラティリティとリスクを内包しているケースが多い。
Mika Kuramoto
CryptoDnesで専属ライターとして仮想通貨領域の記事を執筆中。2020年に仮想通貨投資を開始し、ビットコインやNFT、DeFiなど多様な分野での投資経験を積む。2025年1月にCryptoDnesのチームに加わる。