金利3%時代、円ステーブルコインに追い風?残る最大の壁は「規模」
米ドル連動ステーブルコインUSDCを発行するサークル社の最新決算が、このビジネスの収益構造を白日の下に晒した。4-6月期の総収益7億130万ドルのうち、準備資産の運用益が実に6億6770万ドル(全体の約95%)を占める一方、取引関連収入はわずか530万ドルにとどまる。年間32兆ドルという巨額の送金実績を誇るUSDCであっても、その収益源は送金手数料ではなく、顧客から預かった資金を米国債などで運用して得る利息であるという構図だ。このビジネスモデルは、日本の金利環境下では長らく成立し得なかった。政策金利がゼロ近傍またはマイナス圏にあった時代、円建てステーブルコインがユーザーから預かる円を安全資産で運用しても、システム運営や法令対応のコストすら賄えないのが実情だった。円建てステーブルコインが世界市場でこれまでほとんど存在感を示せなかった最大の要因は、まさにこのシンプルな採算性の問題にある。だが、日銀の利上げにより政策金利が3%台へと達した今、状況は一変しつつある。収益モデルがようやく現実的なものとなり、国内の金融機関や大手企業による円建てステーブルコインの発行計画が加速する可能性が高まっている。残された最大の課題は、米ドル建て(USDCやUSDT)に大きく水をあけられた流動性と流通量——すなわち「規模の壁」をどう乗り越えるかだ。21年の改正資金決済法で法的枠組みが整い、26年現在で複数の事業者が参入準備を進める中、金利という追い風を追い風で終わらせないための、実用性と利便性の向上、そして海外取引所への上場や大口需要の創出など、エコシステム構築に向けた本気度が問われている。
制度と金利が同じ年に動いた
その前提が2026年に二つの面から変わりました。制度面では、6月1日に施行された改正資金決済法により、信託型ステーブルコイン(特定信託受益権)の裏付資産について、発行額の50%を上限に国債および定期預金での運用が認められました。それまでは全額を要求払預貯金で管理する必要があり、運用の余地がほぼありませんでした。
金利面では、日銀が6月16日の会合で政策金利を0.75%から1.0%へ引き上げ、1995年以来31年ぶりの水準となりました。9月1日には10年国債の利回りが3%を突破しています。裏付資産の半分を短期国債で運用できる制度と、その国債に相応の利回りが乗る金利環境が同じ年に揃ったことになります。発行残高が積み上がれば、円建てでも準備収入が事業として成立する条件が初めて整った形です。
それでも残るのは規模の壁
課題は残高です。世界のステーブルコイン市場は時価総額で約3100億ドル規模とされ、その8割から9割をドル建てが占めます。円建ては5000万ドル前後、全体の0.02%にも届かない水準です。国内初の資金移動業型として2025年10月に発行が始まったJPYCの累計発行額も、2026年4月15日時点で21億円を超えたところです。準備収入は残高に比例するため、この規模では収益モデルとして機能しません。
動きは出ています。三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行の3行は6月10日に共同発行の覚書を締結し、2027年3月までの商用取引開始を目指しています。裏付けは現金と短期国債で、想定用途は証券決済です。ただし金利は上がるだけでなく下がることもあります。
サークルの決算は準備収入モデルが成立し得ることと同時に、その事業が金利水準に全面的に依存する脆さも示しています。円建てが後発である分、そこを織り込んだ設計ができるかが問われることになりそうです。
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