SBI新生銀行がDCJPYと提携へ──JPモルガン・DBS参加のグローバル基盤「Partior」CEOが明かす真の狙い
日本の金融巨人がブロックチェーン決済の未来に巨大な賭けに出た。SBI新生銀行がDCJPYと連携し、JPモルガンやDBSが参加するグローバル基盤「Partior」に参画する動きは、単なる技術導入を超えた戦略的転換点を示している。
伝統的銀行業務の限界を打破
Partiorプラットフォームは従来の国際送金システムを根本から再定義する。数日かかっていたクロスボーダー決済が数秒に──しかも従来の1/10以下のコストで実現可能になる。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)と民間デジタル通貨の融合が、ようやく現実味を帯びてきた。SBI新生銀行の動きは、日本の金融業界全体がデジタル資産領域で存在感を強めるための布石だ。
「銀行業界は長年、国際送金の非効率性に目をつぶってきたが、ブロックチェーン技術がついにそのタブーにメスを入れる」とある関係者は語る。パートナーシップの詳細は来月明らかになる予定で、業界関係者の注目が集まっている。
ゆうちょ銀行の参画で話題を呼んだデジタル通貨「DCJPY」。ステーブルコインの話題一色だった業界に「トークン化預金(デポジット・トークン)」勢として一石を投じたが、さらに大きなニュースが伝わってきた。
SBI新生銀行がDCJPYの導入検討を開始、さらにJPモルガン、シンガポールのDBS、英国のスタンダードチャータード銀行というグローバル大手銀行が参加するシンガポールの次世代決済プラットフォーム「Partior」との提携検討に着手したと発表した。Partiorには、シンガポールの政府系投資会社Temasek(テマセク)も出資している。
つまり、DCJPYは、ゆうちょ銀行、SBI新生銀行(検討中)と国内のネットワークを強化するうえに、さらにグローバル規模にまで拡大することになる。
ディーカレットDCPが主導するDCJPYは、銀行預金をトークン化する「トークン化預金(デポジット・トークン)」。ステーブルコインとは異なり、利用はネットワークに参画する銀行の口座を持つ者に限られるが、銀行がKYCを実施済み、参加する銀行や企業のみがアクセスできるネットワーク(パーミッションド・ネットワーク)内で取引を行うため、高い信頼性がメリットとされる。
9月8日、提携のために来日したPARtiorのCEO、ハンフリー・ヴァレンブレーダー(Humphrey Valenbreder)氏にその狙い、今後の展開などを聞いた。
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グローバルな預金トークン・ネットワーク
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:今日来日して、明日には帰国する予定だ。特別なミッションのために来日した。ディーカレットDCP、SBIホールディングス、SBI新生銀行との提携を進めるためだ。通常なら、会議をいくつも設定するが、今回は特別な機会だ。
:驚くべきことだが、シンガポールでの最初のミーティングは、ほんの2週間前のことだ。なので、今回来日できたことを非常にうれしく思っている。大きな銀行がこれほど迅速にプロジェクト開始や基本合意書の締結を決断することは極めて特別なことだ。本日、関係者と会い、強力なサポートを得られたことは印象的だった。
:これまで、我々がネットワークを拡大させる際に参加する銀行から必ず問われたことは「日本円はいつ加わるのか」だった。日本円はグローバル貿易において極めて重要な通貨であり、日本円の流動性がなければネットワークは不完全なままだ。日本経済の規模や貿易フローを考えると、日本円は欠かせない。
:日本円は、世界の主要通貨のひとつ。それ自体が答えだ。
「テクノロジー企業であり、中立」
:200%補完的な関係だ。Partiorは、JPモルガンがいなければ存在しなかった。だが、JPモルガンのトークン化預金ネットワーク「Kinexys」は、JPモルガンによるサービスであり、一方、Partiorは複数の銀行による、複数の銀行のためのサービスだ。似ているが異なり、完全に補完関係にある。ひとつの銀行が複数の銀行のための解決策をもたらすことはできない。
Partiorはネットワークであり、その点が大きな違いだ。さらに、JPモルガンはライセンスを持つ銀行だが、われわれはテクノロジー企業であり、ここは非常に重要な違いだ。われわれは中立な存在であり、複数の銀行、複数の銀行に対して中立だ。
:ディーカレットDCP、SBIホールディングス、SBI新生銀行が非常に迅速に決断を下したこと自体が重要性を示していると思う。日本円をよりオープンなものにしたいという意図と、我々がすでに試みていることとが重なるところに大きな可能性があるだろう。ネットワークに参加する銀行にとって、他の通貨にアクセスしやすくなることは非常に効率的なことだ。
:われわれはすべての形態に中立だ。ユースケースや規制当局の判断によって最適な形態が変わると考えている。規制に則ったものであれば、トークン化預金でも、ステーブルコインでも支援する。規制を受けていない解決策を規制を受けていない事業者に提供するつもりはない。われわれの主な焦点は銀行や金融機関であり、適切に取り組もうとする事業者だ。
Partiorはテクノロジープロバイダーであり、IPhoneやAndroidのようにテクノロジー自体は規制されない。ルールは、ネットワークに参加する当事者同士が合意し、それに従う。例えば、日本円を引き落として米ドルを振り込むという取引は、双方で「送金すれば、必ず返金される」と合意していなければ成立しない。そうした約束事をまとめたルールブックこそが極めて重要になる。
:標準化されたソリューションを提供し、その中から各国の規制に応じてオプションを選択できるようにするのが理想だ。日本だけ別の仕組み、米国だけ別の仕組みというやり方は望ましくない。Partiorはどの市場でも同じであるべきで、その中で必要なオプションをオン/オフできることがベストだ。
:技術的にはすべて可能だ。問題は、技術ではなく政治の選択だ。参加者間でどこまで含めるかを選択できるし、一定の範囲に限ることもできる。Partiorとして唯一望まないことは「ルール違反」。制裁対象の銀行や国はルールブック上、参加を認められない。だが国の制度や各銀行に対してPartiorは中立。テクノロジーには国境はなく、規制によって制御されるだけだ。
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金融・テクノロジー分野で20年以上のキャリアを有し、現在はブロックチェーンを活用した清算・決済向け市場インフラ「Partior」のCEOを務める。
これまでに複数のフィンテック企業、金融機関で主要なリーダー職を経験。アジア、米州、欧州を含む複数地域での経験を背景に、グローバル視点で事業成長、イノベーション創出、成果達成を推進してきた。
ブロックチェーンを基盤とする清算・決済向け市場インフラ。2021年、シンガポール金融管理局(MAS)支援の「Project Ubin(プロジェクト・ウビン」から独立して誕生。株主にはTemasek(テマセク)、DBS、J.P.モルガン、スタンダードチャータードなど。
業界で課題となっている決済の遅延、取引の透明性不足、高コストの解消を図り、金融機関と顧客の資金移動を効率化する。デジタル・非デジタル資産、各通貨ネットワークと連携し、リアルタイムのクロスボーダー多通貨決済、PvP・DvP決済、貿易金融機能を提供する。
|インタビュー:橋本祐樹
|文:増田隆幸
|撮影:CoinDesk JAPAN編集部
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