仮想通貨を悪用した特殊詐欺が急増―被害総額2日で2億円超の衝撃

デジタル資産の影で蠢く新たな脅威。巧妙化する詐欺手法が、わずか48時間で巨額の資産を吸い上げた。
■ 進化する金融犯罪の手法
従来のフィッシングや偽取引所を超える、高度に組織化された詐欺スキームが台頭。スマートコントラクトの脆弱性を突くものから、偽のステーキング報酬を餌にしたものまで、その手口は多様化の一途をたどっている。仮想通貨の非可逆的な取引特性が、犯罪者にとっては「都合の良い」環境を作り出している現実が浮き彫りに。
■ 2億円超の被害が示すもの
この数字は単なる金銭的損失を超える意味を持つ。投資家保護の制度的な隙間、そして自己責任が原則となるこの業界における「セーフティネット」の不在を如実に物語る。金融庁(FSA)の規制が追いつかない速度で、新たな悪意あるイノベーションが生まれ続けている。
■ プロフェッショナルですら陥る罠
驚くべきは、被害者のうち一定数が経験豊富なトレーダーや技術リテラシーの高い個人だったという点だ。過剰なリターンを謳う「投資案件」の甘い誘いに、冷静な判断が鈍る瞬間が誰にでもある――暗号市場の熱狂が生む盲点だ。
市場が次のAll-Time High(ATH)を目指す中、その成長の陰で肥大化する「闇の生態系」。伝統金融界が冷笑を隠さないのも無理はない――自己規制だけに依存する業界が、巨額の資金を扱うのにふさわしい成熟度を示せていない、と。真の分散型金融(DeFi)の未来は、技術的な堅牢さだけでなく、コミュニティ全体の警戒心と知恵にかかっている。
警察官を装い計3100万円の被害
青森県内では1月21日、2件の仮想通貨詐欺被害が発表された。むつ警察署によると、県内の40代男性が2025年12月20日、警視庁刑事部捜査二課のキムラタモツを名乗る男から電話を受け、詐欺グループへの関与を疑われたとして捜査に応じるよう指示された。男性は徳島県警のホンダを名乗る男との間でLINEのビデオ通話を行い、Yシャツ姿の男から警察手帳を見せられた。その後、検事のワタナベを名乗る男からビデオ通話で逮捕状を提示され、現金と仮想通貨の提供を要求された。
男性は12月21日から26日にかけて、県内の金融機関ATMから計190万円を振り込み、仮想通貨取引所バイナンスで購入した仮想通貨トロン(Tron、$TRX)計425万2959円相当を指定アドレスに送信した。12月27日に相手と連絡が取れなくなり被害が発覚した。
また、十和田警察署は同日、県内の70代男性が仮想通貨投資名目で1250万円をだまし取られたと発表した。男性は2023年3月中旬、クリプトワークスの目黒を名乗る男から投資を持ちかけられ、画面共有アプリを使って仮想通貨取引所bitFlyerと海外取引所と称するBitbaaziに口座を開設した。その後、小栗と名乗る別の男から投資を勧められ、3月30日から4月24日までに4回にわたり計1200万円を振り込んだ。男性は2024年10月頃に民間調査会社から詐欺と指摘され、被害に気づいたという。
全国で高額被害が続出
奈良県警は1月20日、香芝市の70代男性が4949万円相当の仮想通貨をだまし取られる被害に遭ったと発表した。県警生活安全企画課によると、男性宅に警視庁の警察官を名乗る男から電話があり、LINEで刑事課の野村や森田と名乗る男らと連絡を取るようになった。男性は口座調査が必要だと指示され、2025年10月から12月にかけて計7回、別のアプリで仮想通貨を送った。その後、相手と連絡が取れなくなったという。
富山中央警察署も1月20日、富山市在住の40代男性が1500万円をだまし取られたと発表した。2025年11月、仙台の郵便局職員を名乗る女から電話があり、仙台中央警察署捜査二課のヤマモトを名乗る男に代わった。男性はLINEをインストールするよう指示され、ビデオ通話で逮捕状を見せられた。仙台地方検察庁のオサナイを名乗る男から保有資産の送金を求められ、男性は仮想通貨取引口座とネットバンキング口座を開設し、計1500万円を振り込んだ。
北海道警察は20日、北海道苫小牧市でフェイク動画を利用した投資詐欺による過去最大規模の被害について発表。
「保証会社に審査料を支払えば損金を取り戻せる」等と言われ、指示されえたアドレスに投資や審査料等の名目で、現金及び仮想通貨を要求され、約1億300万円をだまし取られる被害が発生。著名人等になりすました詐欺広告から被害に遭うケースが相次いでいます。SNS上での投資話には要注意! Pic.twitter.com/sEqRaFg1Wv
— 北海道警察防犯情報発信室 (@HP_Seian) January 20, 2026北海道放送によれば、70代男性が2025年6月20日頃、実業家の孫正義氏と政治評論家の寺島実郎氏が投資について対談する動画をインターネット上で視聴した。この動画で紹介された金融商品取引業者のウェブサイトに口座登録を行ったところ、翌日から電話やメールで投資を勧められた。アメリカ大手IT企業の決算期を理由に投資を促され、さらに赤字は追証の対象となり裁判沙汰になると脅されたほか、保証会社への審査料支払いで損金を取り戻せるとの説明を受けた。
男性は6月21日から11月20日までの間に14回にわたり、投資や審査料、担保料などの名目で約1億300万円の現金および仮想通貨を入金した。サイト上では利益が出ているように見せかけられていたが、孫正義氏と寺島実郎氏の対談の事実は確認されておらず、動画自体がフェイクだったとみられている。
警察が仮想通貨詐欺への警戒強化を呼びかけ
各警察は共通して、捜査機関がLINEなどのSNSで取り調べを行ったり、金品を要求したりすることは絶対にないと強調している。また、必ずもうかるなどと投資を勧めてくる場合は詐欺の可能性があるとして、投資話を持ちかけられた際は家族や警察署に相談し、一人で対応しないよう注意を呼びかけている。
特にSNSなどで投資名目での振込を依頼された場合は詐欺を疑い、警察相談専用電話「#9110」に相談するよう促している。仮想通貨の匿名性や送金の不可逆性を悪用した詐欺手口は今後も増加する可能性があり、利用者側の警戒が求められる。