USDCがUSDTを逆転、ソラナとトランプ氏の影響で安定コイン市場が激変
安定コインの覇権争いが新たな局面へ。USDCが長年首位を維持してきたUSDTの時価総額を初めて上回った。市場の構造変化が鮮明になった瞬間だ。
ソラナ・エコシステムの爆発的成長が原動力
高速で安価な取引を実現するソラナ・ブロックチェーンが、DeFiとNFTの両輪で急拡大。その基盤通貨としてUSDCの採用が加速し、需要を押し上げた。開発者コミュニティからの支持も厚く、技術的優位性が市場シェアに直結する構図が浮き彫りに。
政治的要因が市場心理を刺激
ドナルド・トランプ氏の再選が仮想通貨市場に予測不能な影響を及ぼし始めた。規制環境の不透明さの中、米ドルに直接紐づくUSDCが「安全資産」としての地位を確立。伝統的な金融機関でさえ、リスク回避のためUSDCへのシフトを検討している。
流動性の大移動が始まった
主要取引所がUSDCペアを次々と追加。機関投資家の参入障壁が低下し、数十億ドル規模の資金が短期間で流入。市場は「流動性が流動性を呼ぶ」という古典的な金融原則を、今まさにデジタル資産で再現している。
透明性が信頼を勝ち取る
USDTを発行するテザー社の準備金構成については依然として疑問符が付く一方、USDCの発行元Circleは四半期ごとの監査報告を公開。規制当局との協調姿勢も評価され、制度的信頼性の差が投資家の選択を左右した格好だ。結局のところ、暗号市場でも「信用」は最も高価な通貨なのかもしれない。
USDCが39%差で首位
Artemis Analyticsのデータによると、USDCの年間送金額は2025年に18兆3000億ドル。一方、USDTは13兆2000億ドルで、その差は39%。
ARtemisのステーブルコイン送金額指標は、MEVボット取引や取引所内の送金を除外し、独自の「有機的」オンチェーン活動に絞っている。この値は実際の決済やDeFi利用の上限を示し、ボットや自動売買によるカウント水増しを排除している。つまり、実需決済や個人間送金、DeFi利用を集計し、ボットの取引や取引所のウォレット間移動は含まない。
USDCが先行した理由
この差が生じた要因は、DeFiの仕組み、利用場所、予想外の出来事、規制動向の4点。
1. DeFi取引高
アナリストは、この差の主な理由を各ステーブルコインの用途に求めている。USDCは分散型金融(DeFi)の主役であり、トレーダーが頻繁に資金の出し入れを行っている。同じドルが貸付プロトコルやDEXスワップを経て繰り返し利用される。一方でUSDTは主に価値保存や決済の手段として活用され、保有に留める傾向が強い。
2. ソラナ要因
ソラナのDeFi市場の急拡大が、USDC成長の主な原動力となった。現在、同ネットワーク上のステーブルコインのうち7割超がUSDCとなる一方、USDTはトロンに集中している。2025年第1四半期だけで、ソラナのステーブルコイン供給額は52億ドルから117億ドルまで急増し、ほぼ全てがUSDC流入によるものだった。
3. トランプトークンの皮肉
2025年1月に「TRUMP」ミームコインが登場し、USDCの利用拡大に拍車をかけた。同コインの主な流動性プール(Meteora DEX)はUSDC建てであり、USDT建てではなかった。このため、TRUMP購入希望者はまずUSDCを調達する必要があった。この需要急増がソラナのDeFi全体に波及した。
皮肉なことに、トランプ一家は3月にWorld Liberty Financialを通じて独自のステーブルコインUSD1を立ち上げている。しかし、彼らがきっかけとなったTRUMPトークンは、競合する別のステーブルコインを押し上げる結果となった。
4. 追い風となる規制動向
米国では2025年7月にGenius法が成立し、ステーブルコイン発行者の明確な法的基準が導入された。業界関係者は、USDCが長年にわたり規制遵守や準備金透明性を重視してきたことで、新制度のもと最大の恩恵を受ける立場にあると述べる。欧州でもUSDCはMiCA規制に適合し、USDTの上場廃止圧力が強まる中で有利に立った。
高まる潮流
USDCの急伸は、ステーブルコイン全体の過去最高の活況につながった。2025年の総取引高は33兆ドルで、前年比72%増となった。第4四半期単独でも11兆ドルの流入があり、第3四半期の8兆8000億ドルから加速した。
ブルームバーグ・インテリジェンスは、ステーブルコインの決済規模が2030年までに56兆ドルへ拡大すると予測しており、同分野が伝統的な決済ネットワークと並ぶ主要なグローバル決済インフラとなる可能性を示している。