中東・北アフリカ(MENA)がブロックチェーンゲームの新たな成長拠点に:2026年の投資流入が急増か
中東・北アフリカ(MENA)地域が、ブロックチェーンゲーム業界の次なるフロンティアとして急浮上している。規制の明確化、若年層の高いスマートフォン普及率、そして伝統的な金融システムへの懐疑的な視線が、完璧な成長の土壌を形成。VCやゲームスタジオの視線が、従来の東アジアや北米から、この石油に代わる「デジタル油田」へとシフトし始めた。
規制のグリーンライトが投資を加速
アラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビアを中心に、仮想資産に関する法整備が急速に進展。一部の金融当局(FSAに相当する機関)は、ブロックチェーンを単なる投機の対象ではなく、経済多様化の核となる「実用技術」として位置づけ始めている。この規制の確実性が、大手ファンドにとって最大の魅力だ。不透明な法的グレーゾーンで遊ぶより、ルールが明確なテーブルでプレイする方を好むのは、ウォール街も砂漠の投資家も変わらない。
ゲーマーではなく「投資家」を生み出す地域性
MENA地域のユーザー層は、プレイ自体よりも資産の所有とその価値向上に強い関心を示す傾向がある。これは、Play-to-Earn(P2E)モデルから、資産の真の所有権と流通性を担保する「Own-to-Earn」への業界の転換と見事に一致。ゲーム内アイテムが単なるデータではなく、取引所で売買可能なデジタル資産となるパラダイムが、ここでは自然に受け入れられている。
伝統金融への不信がWeb3への扉を開く
高いインフレ率や自国通貨の不安定性を経験してきた地域の若年層は、従来の銀行システムに懐疑的だ。彼らにとって、非保管型ウォレットで管理できるゲーム内資産は、銀行口座よりも「自分のもの」という実感が強い。中央管理者を必要としない経済圏への参加は、金融的な自立への一歩と映っている。
次のバブルは砂漠から?冷静な視点が必要
確かに、資本流入と熱狂的なユーザー基盤は強力な追い風だ。しかし、過度な楽観は禁物。同地域への集中投資は、一部で「次の叙事詩的な成長ストーリー」として語られ、資金が群がっている側面もある。真の持続的成長は、短期的なトークン価格の高騰ではなく、面白くてプレイヤーが長く留まるゲームそのものの開発から生まれる。砂漠の熱風に煽られて、その本質を見失ってはいけない。結局のところ、優れたゲーム体験こそが、仮想通貨の冬を生き残る唯一の道だ。
急成長が地域の人口動態を一変
BGAの第5回年次調査は、ブロックチェーンゲーム業界の基本構造が再編されつつあることを示している。欧米市場が縮小する一方、他地域ではデジタル基盤と規制体制の強化が加速している。
同調査は2025年に有効回答506件を集め、2024年の623件より減少した。欧米市場の縮小が主因である。ただし、新興地域では実質的な成長が見られる。アフリカは業界人材の5.5%、中南米は11.9%を占め、アジア・欧州の伝統的な優位から大きく軸足が移りつつある。
女性の参画率は過去最高の22.7%を記録。2024年の17.3%から上昇した。中心は25歳から44歳の層である。MENAとアフリカでは若年層主導の拡大が続く。アフリカ回答者のうち、40%が25歳未満という点も注目される。
規制と品質が業界の最優先課題
業界人材は、ブロックチェーンゲームの将来に最も重要な要素として「規制の明確化」を挙げている。全体の64.4%が、政策と規制の整備が業界にプラスに働くと回答した。この傾向は、法的フレームワークの明確さが正当性担保の鍵であるとの認識の高まりを反映する。
MENA各国は規制整備で迅速に動いてきた。UAE、バーレーン、モロッコなどではステーブルコインの規制枠組みや試行運用が進む。これにより、MENAは決済分野の革新で先頭に立っている。例えばオマーンは1年でデジタル決済が7倍増加した。デジタルウォレットが全取引の74%を占め、先進的な金融システムをもつブロックチェーン経済が支えられている。
高品質なゲームのローンチが、主要な推進要因の2位(29.5%)となった。この動向は、かつての投機型モデルからの脱却を示している。持続的かつ収益重視のビジネスモデルが3位(27.5%)。ステーブルコインも27.3%から支持され、国際送金やゲーム内決済のツールとなっている。
スタジオは市場収縮を経て「プロダクトファースト」へシフトした。ブロックチェーンゲームへの資金は2022年の100億ドル超から2025年には2億9300万ドルまで急減した。スタジオはトークン投機より実収益を重視し始めている。ギルド参加率も2022年の20.7%から2025年の7.9%まで落ち、持続不能なモデルが淘汰された。
詐欺、資金不足、AIが主要リスクに浮上
活発な動きの一方で、業界は深刻な障壁にも直面している。詐欺や不正は依然、最大の脅威(36.0%が指摘)である。ラグプルや悪質スキームの存在が、慎重なゲーマー層の普及を妨げている。
資金不足も課題であり、重要度では2位(32.6%)。2021年以降、新興企業の80%から93%が資金枯渇で閉鎖を余儀なくされた。主要VCの新規投資もストップした。スタジオは今、収益性と持続性を証明する責任を負う。
生成AIは成長のカギでもあり、同時にリスクも孕む。マーケティングやコンテンツ制作で46%がAIに期待を寄せる一方、38.9%はAIによる不正利用への懸念を示す。不正行為の増加、内容の陳腐化、創造性の喪失などが課題である。
デジタル基盤が中東・北アフリカの競争力強化
MENAの成長は、イノベーション志向の規制だけでなく、デジタルネイティブな人口構成と高い金融リテラシー、リスク許容度によるもの。MENAのトレーダーの約45%がデモ口座で取引を始めており、経済教育への需要が広く存在していることがうかがえる。地域のトレーダーは高い勝率と世界随一のリスク志向を示す。
近代的決済システムも重要な役割を果たしている。多くの国で即時決済、オートメーション化されたクリアリングハウス、モバイル基盤が整備された。これらの整備により、取引コストと決済時間が削減され、国境を超えた価値移転がブロックチェーンゲーム経済で現実となっている。
主要スタジオも注目している。BGA調査にはユービーアイソフト、スクウェア・エニックス、コインテレグラフ、ポリゴンラボ、DMCCドバイ、主要な地域金融機関のスタッフが名を連ねている。伝統的ゲーム企業とブロックチェーン系企業の接近は進む。パブリッシャーがWeb3を模索する中、既存モデルを維持しながら新技術を統合している。
世界全体でステーブルコインの年間決済高は2024年に27兆6000億ドルに上った。MENAはリテール決済イノベーションの主導役である。規制、基盤、ユーザー知識への注力により、ブロックチェーンゲームがニッチから主流になる過程で同地域は強い地位を築いている。
産業界が縮小を経て2026年回復を目指す
Web3トークン価格は過去最高値から90%〜95%下落した。スタジオはトークン依存のモデルから方針転換し、伝統的な収益方式にブロックチェーン要素を組み合わせている。多くのプロジェクトが消滅したが、残ったものは強固な基盤を持つ。知的財産と持続可能な経営モデルを持つスタジオが、2年間の資金難を経て再び投資家の注目を集めている。
MENA躍進の背景には、業界の成熟がある。地域開発者は安定した規制、多様な収益モデル、機関投資家や政府系ファンドからの資金面で恩恵を受けている。
2026年を見据え、業界は「質の高いゲームが長らく期待された成果を実現できるのか」に焦点を当てている。MENAのインフラ、人材、規制環境は大きな優位性となる。ただし、本当の成功には「報酬」目的ではなく、純粋に「楽しさ」で選ばれるゲームが生まれるかどうかが鍵となる。来年、MENAがブロックチェーンゲーム成長エンジンとなるかが試される。