米国、中国など敵対国の農地買収を全面禁止へ 国家安全保障と食糧安全保障強化の新たな一手
米国政府が中国をはじめとする敵対国による米国内農地の新規購入を全国的に禁止する方針を発表しました。この措置は国家安全保障と食糧安全保障の観点から実施されるもので、すでに保有されている農地の没収も検討されています。本記事では、この政策の背景、影響、そして業界の反応について詳しく解説します。
なぜ米国は敵対国の農地購入を禁止するのか?
米国農務省のトム・ヴィルサック長官は8日、国防省・国土安全保障省の長官と共同で記者会見を開き、「米国農業は家族の食卓を支えるだけでなく、国家を守る仕事に直結している」と述べ、中国、ロシア、イランなどとのつながりがある外国人の農地新規購入を全国的に禁止する措置を実施すると発表しました。
この決定の背景には、中国資本による米国農地の買収が近年増加していることがあります。特に懸念されているのは、食糧供給網への潜在的な影響です。専門家の間では、危機的状況において外国勢力が食糧供給に影響力を行使する可能性が指摘されてきました。
中国資本が保有する米国農地の現状
米国農務省のデータによると、2021年時点で中国投資家が所有する米国農地は26万5,000エーカー(約1,073平方キロメートル)に上ります。これは全米農地の0.0003%に相当しますが、外国人が保有する農地全体(4,600万エーカー)の0.5%を占めています。
中国資本が保有する農地の大部分は、2013年に中国WHグループ(万隆会長)が買収した米国食肉加工大手スミスフィールド・フーズに集中しています。同社は最近、土地保有を8万5,000エーカーに削減し、昨年は4万エーカー以上を売却したと発表しました。
州レベルでの規制強化の動き
連邦政府の動きに先立ち、いくつかの州ではすでに外国人の農地所有を制限する動きが見られます。2023年、アーカンソー州は中国系農薬企業シンジェンタに対し、160エーカーの農地売却を命じ、所有権の不開示を理由に28万ドル(約3億8,400万円)の罰金を科しました。
フロリダ州やモンタナ州などは、軍事施設近くの土地の中国人による購入を全面禁止する法律を可決しています。これらの動きは、国家安全保障上の懸念から生じています。
連邦議会の対応と今後の展開
連邦議会も最近、中国など敵対国に関連する企業の農地購入を制限する法案の審議を加速させています。先月、下院は農務省に対し、敵対国に関連する外国人の農地購入状況を報告させる「農業リスク審査法」を可決しました。
超党派の「農地法」は、大規模な外国人土地取引に対する連邦審査と公開データベースの構築を推進しています。農務省は「懸念国と関連する個人70人、団体550団体を契約・研究パートナーシップから除外した」と発表しています。
業界の反応と専門家の見解
業界関係者からは「中国などの外国敵対国による農地投資拡大は、危機時に米国の食糧供給網に影響を及ぼす可能性があるという懸念が以前から指摘されていた」との声が上がっています。
米国農務省は「今回の措置が米国農業と食糧安全保障の強化、外国による戦略的弱点の遮断に役立つだろう」と説明しています。一方で、中国側はこの決定を「経済的保護主義」と批判する可能性があります。
よくある質問
米国が禁止する「敵対国」にはどのような国が含まれますか?
現在のところ、中国、ロシア、イランなどが明確に挙げられていますが、今後リストが拡大する可能性もあります。
すでに中国資本が保有している農地はどうなりますか?
米国政府は既存の保有農地についても没収を含む全ての選択肢を検討中であり、近く大統領令が発令される予定です。
この政策は米中の貿易関係にどのような影響を与えますか?
専門家は、この措置が米中貿易摩擦をさらに悪化させる可能性があると指摘していますが、食糧安全保障は国家の核心的利益であるため、米国はこの路線を堅持すると見られています。
他の国々も同様の政策を取る可能性はありますか?
オーストラリアやカナダなどでも外国、特に中国による農地買収への懸念が高まっており、同様の規制が導入される可能性があります。
この政策は米国内の農家にどのような影響を与えますか?
短期的には外国資本による土地購入価格の上昇圧力が緩和される可能性がありますが、長期的な影響についてはまだ不透明です。