「Z世代のカスタム冷コーヒー」で勝負!ネスカフェが100年の常識を破る戦略
- なぜネスカフェは100年の伝統を変えるのか?
- ホームカフェブームを狙い撃つ「ネスカフェエスプレッソ濃縮液」
- TikTokインインフルエンサーとのコラボでZ世代にアプローチ
- ネスレの苦境が生んだ大胆な転換
- 「酒のない夜」を攻略する新戦略
- インド・中国市場への野心的な拡大計画
ネスカフェが100年間続いた「ホットコーヒー」の伝統を打ち破り、Z世代に向けた「カスタム冷コーーヒー」で市場攻略に乗り出した。自宅で楽しむ「ホームカフェ」ブームを狙う一方、お酒を飲まない夜の集まり向けに「洗練された社交飲料」としての進化も図る戦略的転換だ。特にZ世代の3人に1人が冷たいコーーヒーを好むという調査結果を受け、ネスレグループは成長戦略の根幹を見直す重大な決断を下した。
なぜネスカフェは100年の伝統を変えるのか?
ネスレネスカフェのドン・ハワード全球カテゴリ責任者は「ネスカフェの核心は本来、朝に熱く飲むものだった」と認めつつ、「私たちは一日中、特に午後に冷たく飲めるよう、若い世代を再ターゲットする方向に転換している」と説明する。市場調査によると、現在人々が外出先で飲むコーーヒーの32%、実に3分の1がすでに冷たいコーーヒーだ。Z世代にとって冷たいコーヒーは、コーヒー世界への最初の出会いである場合が多い。

ホームカフェブームを狙い撃つ「ネスカフェエスプレッソ濃縮液」
戦略の最先端に立つのは「ネスカフェエスプレッソ濃縮液」。高価な機器がなくても自宅でカフェ品質のドリンクを楽しみたい「ホームカフェ」愛好者を的確に狙った製品だ。消費者が牛乳、水、はたまたレモネードなど様々な飲料と混ぜて自分だけのコーヒーを作れる点に重点を置いている。実際、18~34歳の消費者の75%がシロップや植物性ミルクなどを使って自分専用のドリンクを作ることを重視しているという調査結果もある。
ハワード氏は「若者のほとんどは冷たいコーヒーを飲んで育った」と指摘。「彼らは冷たいコーーヒーと多様な風味、食感、添加物を期待している」と語る。この製品はクラシック、バニラ、キャラメルなど様々なフレーバーで発売され、R&Dアクセラレータープログラムで開発された後、アメリカのクローガー店舗で試験販売されるなど慎重な手順を踏んでいる。
TikTokインインフルエンサーとのコラボでZ世代にアプローチ
マーケティング手法も従来の広告ではなく、信頼性と創造性を重視したクリエイターとの協業を選択。代表例としてTikTokで人気のザック・キングとのコラボレーションで創造的なコンテンツを展開する一方、ポップアップカフェなどの体験型イベントを迅速に企画し、Z世代の急速な流行変化に柔軟に対応している。業界関係者によると、この製品群は年間1億スイスフラン(約1378億円)を超える売上ポテンシャルがあるとみられている。
ネスレの苦境が生んだ大胆な転換
ネスカフェのこの動きは、親会社ネスレの切迫感とも無関係ではない。ネスレは近年、競合のユニリーバやダノンに後れを取り、売上成長が低迷していた。ネスレのロラン・フレイクスCEOは「前任者時代の無分別な買収が会社の基盤を弱めた」と分析し、「数は少なくても、より大きく、より良いイノベーションで中核事業に集中する」と公言している。コーーヒーとネスプレッソは、同社が定めた2025年までの6大重点課題のうち2つを占めるほど重要な成長分野だ。
「酒のない夜」を攻略する新戦略
ネスカフェは冷たいコーヒーを足がかりに、新たな領域拡大を目指している。Z世代が単にコーーヒーを飲むだけでなく、飲み物を自ら作り共有する「体験」そのものを消費する点に注目したのだ。また、環境に優しい原料やフェアトレードなどの「倫理的価値」を重要な消費基準とする傾向も見逃せない。
ハワード氏は「若い消費者の興味深い点は、彼らがはるかに少ない酒を飲むことだ」とZ世代の飲酒習慣の変化を指摘する。生活費危機の影響とする見方もある中、ネスカフェはZ世代の新しい社交文化に機会を見いだしている。「彼らは夜に友人と集まる時、大人の飲み物ではあるがアルコールが入っていないものを飲みたがる。まさにこの点が、ネスカフェがデカフェ製品、冷たい製品、高級感ある製品などで市場に進出する機会を与えてくれる」とハワード氏は強調した。
インド・中国市場への野心的な拡大計画
伝統的な茶市場であるインドや中国への進出と並行し、コーーヒーを「洗練された酒の代替品」として位置付けようとする野心的な計画も進行中だ。ネスレはアジア市場において、コーヒーを単なる飲料ではなく、ライフスタイルの一部として販売する戦略を強化している。特に都市部の若年層を中心に、西洋風のカフェ文化と地元の飲食習慣を融合させた新たな市場創造を目指している。