スイス・ホルシム分社「隠れた宝石」アムライズ、ウォール街目標株価22%急騰
北米最大のセメントメーカーであるアムライズ(Amrize)がニューヨーク証券取引所に上場し、ウォール街のアナリストから目標株価22%上昇の評価を受けた。スイスの建設資材大手ホルシムから分離した同社は、アメリカの成長株として過小評価されていると指摘されている。セメント・骨材業界におけるリーディングポジションと強固な事業基盤が投資家の注目を集めており、今後の成長が期待されている。
アムライズとはどのような企業か?
アムライズは2024年6月23日にNYSEに上場した北米最大のセメント生産企業で、時価総額は約38兆5800億円(283億ドル)に達する。同社はセメントだけでなく、コンクリート製造時に混ぜる骨材(砂利・砂)分野でも市場シェア85%で1-2位を占める圧倒的なリーダーだ。北米全域に1000以上の事業所と施設を保有し、このうち18か所がセメント工場である。大規模な商業用屋根材事業も展開しており、事業多角化が進んでいる。

なぜホルシムは北米事業を分社化したのか?
分社化の背景には、欧州と米国での環境規制に対する認識の差がある。欧州投資家はセメント生産時の炭素排出を問題視してホルシム株に圧力をかけていたが、米国市場では持続可能性への関心が相対的に低く、より良い評価を得られると判断した。アムライズCEOヤン・ジェニシュ氏は「米国は世界で最も魅力的な建設市場であり、アムライズ以上の優位性を持つ企業はない」と自信を見せている。ジェニシュ氏は2011年から2017年までスイスの産業会社シカで卓越した業績を上げ、2017年からホルシムのCEOを務めてきた経歴の持ち主だ。
アムライズの投資魅力はどこにある?
RBCキャピタルマーケッツのアンソニー・コドリングアナリストはアムライズ株を「買い」と評価し、目標株価を61ドル(約8万3000円)に設定した。これは現在の株価(49.95ドル)から22%上昇する水準だ。同社は今後3年間で毎年5-8%の売上成長、8-11%のEBITDA成長を見込んでいる。2028年末までに累積80億ドル(約10兆9000億円)以上のフリーキャッシュフローを生み出すと予想され、配当性向30%・初年度配当金は1株当たり82セント(配当利回り1.6%)が見込まれる。また、年間約3億ドル(発行済み株式の約1%に相当)の自社株買いも実施する方針だ。
セメント業界の供給制約が追い風に
アメリカでは環境規制や地域社会の反対により、新規セメント工場の建設が事実上不可能な状況が続いている。最後に建設されたセメント工場は2009年に完成したアムライズのミズーリ州工場で、現在も北米生産量の約20%を占める最大規模の施設だ。この供給制約により、アメリカのセメント需要の約20%は輸入で賄われている。コドリングアナリストは「北米セメント市場は魅力的だが過小評価されており、供給不足が続いている」と指摘する。
競合他社との比較では?
アムライズは2025年予想EBITDAの約10倍で取引されているのに対し、アメリカの骨材生産大手マーティンマリエッタマテリアルズとバルカンマテリアルズは約15倍の水準だ。この評価差は、アムライズが成長余地を残していることを示唆している。トゥルーイスト証券のキース・ヒューズアナリストも「買い」評価と60ドル目標株価を提示し、欧州企業が米国上場に切り替える事例(建材専門CRHや配管資材のファーガソンエンタープライズなど)を引き合いに出して、米国上場が企業価値向上に寄与するとの見解を示した。
今後の事業戦略は?
アムライズの資金優先順位は、(1)資本支出、(2)買収、(3)配当、(4)自社株買いの順。特にM&Aを通じた事業拡大に注力する方針で、北米市場での支配的地位をさらに強化する構えだ。セメント業界の構造的な供給制約を背景に、既存設備を有効活用できる同社の競争優位性は持続すると見られている。
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アムライズの主な事業拠点は?
北米全域に1000か所以上の事業所と施設を保有しており、このうち18か所がセメント工場、462か所が骨材関連施設です。特にミズーリ州のセメント工場は北米生産量の約20%を占める最大規模の施設となっています。
アムライズの財務目標は?
今後3年間で毎年5-8%の売上成長、8-11%のEBITDA成長を目標として掲げています。2028年末までに累積80億ドル以上のフリーキャッシュフローを生み出す見込みで、配当政策としては30%の配当性向を維持する方針です。
セメント業界の供給状況は?
アメリカでは2009年以降、新規セメント工場が建設されておらず、国内需要の約20%を輸入に頼っている状況です。環境規制や地域社会の反対により、新規参入が極めて困難な構造的な供給制約が続いています。
アムライズの競争優位性は?
北米市場での圧倒的なシェア(骨材分野で85%の市場で1-2位)と、既存の生産設備を有効活用できる点が強みです。新規参入が難しい業界特性も追い風となっています。
アナリストの評価は?
RBCキャピタルマーケッツは61ドル、トゥルーイスト証券は60ドルの目標株価を設定しており、現在の株価から20%以上の上昇余地があると評価しています。競合他社と比較してもバリュエーション面で割安と判断されています。