金融インフラの進化がキャリアを再定義する──大学生と専門家が語る、Web3とAIが切り拓く未来【Web3&AI超会議レポート】
伝統的な金融キャリアの終わりか、それとも新たな始まりか。ブロックチェーンと人工知能が金融インフラを根底から書き換える今、次世代のプロフェッショナルはどこを目指すべきなのか。
学生たちの不安と期待
「銀行や証券会社への就職が『ゴール』だった時代は終わった」。ある経済学部の学生はこう語る。代わりに彼らの関心は、分散型金融(DeFi)プロトコルの構築、DAOでのガバナンス参加、あるいはAIを活用したアルゴリズムトレーディングへと急速にシフトしている。キャリアパスが「直線」から「エコシステム」へと変容する中で、必要なスキルセットもコーディング、暗号経済学、コミュニティ構築へと拡大を続けている。
専門家が指摘するインフラの地殻変動
業界のベテランは、変化の核心を「許可を必要としない金融システム」の台頭だと指摘する。スマートコントラクトが仲介者を排除し、24時間365日稼働するグローバルな市場が誕生。これに生成AIが投資分析やリスク管理の自動化で拍車をかける。結果、かつては巨大金融機関に独占されていた機能が、オープンソースのコードへと解体されつつある。「かつての金融は『門番』が支配していた。これからは『プロトコル』が支配する」とある仮想通貨ファンドの代表は言い切る。
新たなキャリアの形
会議では、従来の「就職」とは異なるキャリアモデルが具体例とともに示された。複数のDeFiプロジェクトに流動的に貢献する「エコシステムデベロッパー」、NFTコミュニティの財政を管理する「トレジャリー管理者」、あるいは仮想通貨ネイティブなベンチャーキャピタリスト。共通するのは、特定の企業ではなく、ネットワークやプロトコルへの帰属意識だ。あるパネリストは冗談交じりにこう付け加えた。「良いニュースは、誰もが金融エンジニアになれることだ。悪いニュースは、そうせざるを得なくなるかもしれないことだ。少なくとも、退屈な中間管理職の会議からは解放されるだろうが」。
未来はすでにここにある。ただ、均等には分布していないだけだ。金融のコード化が進む世界で、最も価値のある資産は、もはや伝統的な学歴ではなく、変化するプロトコルを理解し、構築し、貢献する能力そのものになる。次の世代は、キャリアを「探す」のではなく、「構築する」ことを学ばなければならない。さもなければ、誰かが構築したシステムの単なるユーザーで終わるリスクがある。結局のところ、金融の世界で最も古いジョークは今も真実だ──お金はどこかから消えることはない。ただ、その形と、それをコントロールする人々が変わるだけなのである。
Web3の認知拡大や普及を目的に活動する学生団体WeCreate3と千葉工業大学web3研究会は11月30日、AI時代のキャリアやブロックチェーンによって変わる金融システムの将来像を議論する「Web3&AI超会議2025 秋」を六本木の住信SBIネット銀行本社で開催した。会場には現役の大学生を中心に、20代の若手社会人らが集まった。
WeCreate3は全国の17大学を超えるWeb3研究会から構成され、ブロックチェーンに関する勉強会やイベントを定期的に開催している。
「未来の金融の在り方」をテーマに行われたセッションには、官民から5人の専門家が登壇した。
パネリストは、SMBC日興証券Nikko Open Innovation LAB部長の磯野太佑氏、NTTドコモWeb3 Principal Technologistの大月魁氏、Slash Vision Labs CEOの佐藤伸介氏、三井住友フィナンシャルグループデジタル戦略部部長代理・デジタルビジネスエキスパートの中井沙織氏。モデレーターは千葉工業大学デジタル変革科学科准教授の高木徹氏が務め、資産のトークン化や金融インフラの進化がもたらす産業構造の変化や若手のキャリアに与える影響について意見を交わした。
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大月氏は、世の中のWebサービスはインフラ層・インテグレーション層・アプリケーション層の3つに分類できると説明。NTTドコモが提供する「d払い」のようなサービスを作るにも、基盤となるインフラ層と複数のシステムを連携させたインテグレーション層の構築が不可欠だと指摘した。
そのうえで、ブロックチェーンによる決済は「間に人が介在しない」点が従来と異なるとし、コードで自律的に動くAIエージェントとの親和性が高いと指摘。AIとWeb3の連携領域が広がる未来像を示した。
中井氏は銀行業界について、単なる金貸しから、デジタル技術を活用して新たな事業を創出する役割に進化していると強調。次世代の金融インフラはブロックチェーンによって再定義されつつあり、「決済手段としてのステーブルコイン」と「MMFや不動産などをトークン化したデジタルアセット」を組み合わせることで、金融の構造そのものが変わり始めていると説明した。
勉強と体験の両立を
若者のキャリア選択にも話は及んだ。
佐藤氏は「勉強より体験が重要」と指摘。世の中の仕組みはすべて金融で回っていると述べ、自身の投資体験などを通じて金融を理解することは、どんなビジネスにも役立つと助言した。
磯野氏は学生時代を振り返り、「無駄な経験は一つもなかった」と発言。好きなことに没頭し、困難を乗り越える過程は、将来どの分野でも役立つと語った。また、大学での講義について、理論を体系的に学べる機会は社会に出ると得にくいため「非常に貴重だ」と指摘。AIやロボット、ブロックチェーンが融合する社会は複雑に見えるが、過去の理論や数学的な視点で分析すれば本質はシンプルだとし、大学で培う論理的な思考が未来を切り開く武器になるとエールを送った。
この日の締めくくりには、WeCreate3代表の矢野大雅氏が司会を務め、学生からの質問に答えるQ&Aセッションが行われた。
磯野氏と中井氏に加え、世界的コンサルティング企業マッキンゼー出身で「ゼロ秒思考」の著者として知られる赤羽雄二氏、早稲田大学理工学術院教授・先進理工学部部長・研究科長の朝日透氏が登壇した。
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4人は、自分の頭で考えることの重要性やテクノロジーが社会にもたらすインパクトなど、キャリアとテクノロジーの接点に関する質問に幅広く回答。「やりたいことをどう見つけるか」「Web3業界を志望する学生は何を経験すべきか」といった実践的な問いに対して、それぞれの立場から丁寧にアドバイスを送っていた。
|文・撮影:橋本祐樹
|トップ画像:未来の金融の在り方をテーマにしたセッション
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