トランプ政権1年目:仮想通貨市場に吹く追い風と低迷の明暗
規制緩和の風が吹き荒れる。トランプ政権の誕生から1年、仮想通貨業界はかつてない政策環境に突入した。連邦レベルでの包括的規制枠組みが整備され、機関投資家の参入障壁が劇的に低下。伝統金融との境界線が曖昧になる中、新たな資本の流入が市場を活性化させている。
市場の二極化が加速
主要コインとアルトコインの格差が拡大。ビットコインとイーサリアムは機関資金の流入で堅調な推移を見せる一方、中小規模のプロジェクトは流動性不足に喘ぐ。市場全体の時価総額は上昇傾向にあるものの、その内実は「勝者総取り」の様相を強めている。
インフラ整備が急ピッチで進行
米証券取引委員会(SEC)の姿勢転換を受けて、仮想通貨ETFの承認が相次ぐ。保管・決済ソリューションを提供する金融機関が急増し、従来の証券取引所と同等の信頼性が求められる時代に突入。これに伴い、コンプライアンスコストの上昇が新規参入のハードルとなっている。
グローバルな覇権争いが激化
米国の規制緩和は国際的な競争力を意識した政策転換だ。アジア市場での主導権を握る日本やシンガポールに対抗し、米国が「仮想通貨ハブ」としての地位確立を急ぐ。各国の金融当局(FSA等)が対応に追われる中、規制の調和が次の課題として浮上している。
伝統金融の懐疑論は消えず
ウォール街のベテランたちは相変わらず「デジタル・チューリップ・マニア」と冷笑を浴びせるが、その口座には暗号関連商品が並び始めている。金融界のジレンマだ──新しい波に乗り遅れる恐怖と、古い秩序が崩れる不安の間で揺れ動く。
仮想通貨の冬は終わったのか、それとも単なる「政策主導のラリー」に過ぎないのか。市場は次のシグナルを待ち続ける。
ワシントンで高まる仮想通貨への期待
仮想通貨コミュニティは、トランプ氏がホワイトハウスに復帰するのを控え、2025年1月に大きな期待を寄せていた。
同氏は選挙戦で自らを「ビットコイン大統領」と呼び、米国を世界の仮想通貨の中心地にすると公約した。こうした発言で業界の楽観ムードは高まり、さらにトランプ氏が就任直前に自身のミームコインを発行したことで、一層期待が強まった。
同氏は、一定の範囲でこうした公約を実行してきた。
同氏はほぼ直ちに、仮想通貨担当官を任命し、証券取引委員会(SEC)に仮想通貨に友好的な委員長を就任させた。また、業界の一部を初めて規制した連邦法「ジーニアス法」に署名した。
そもそも、当初の業界の期待は控えめだった。
以前、ゲンスラー氏率いるSECの「強制による規制」への批判が長年続き、業界関係者の多くが、ほぼあらゆる方向転換を歓迎する心境となっていた。
トランプ氏による仮想通貨への明確な支持も一貫している。同氏は今週、ダボスで開催された世界経済フォーラムで改めて支持を表明。「クラリティ法」の可決が期待されていることにも言及した。
その一方で、トランプ政権の成果を強調する間にも、仮想通貨市場は下落し、価格は安値を示し続けた。
規制進展も仮想通貨価格が下落
大手仮想通貨の価格動向をBeInCryptoが検証したところ、主要資産はいずれもこの1年でマイナスリターンだった。本稿執筆時点で、ビットコインは1月以来13.4%下落。イーサリアムも9%弱値を下げていた。
アルトコインの下落率はこれよりさらに大きかった。
リップルのXRPは39%下落。ソラナのSOLは約50%値下がり。カルダノのADAは63%下落した。
これらの数字から、2025年に仮想通貨業界で規制環境が進展したにもかかわらず、市場全体の動向には依然として広範な要因が重くのしかかっていることがうかがえる。
株式市場と同様、トランプ氏による関税政策が安定的成長への期待を大きく左右した。構造的な進展は見られたが、仮想通貨は依然として投機的な資産クラスである。不透明感が高まる局面では、最初に打撃を受けやすい市場の1つとなっている。
トランプ氏が昨年4月に「リベレーション・デー関税」を発表した後、ビットコインは7万6300ドルまで下落し、2024年11月以来の最安値を更新した。さらに10月10日には、対中100%の報復関税が発表されると、ビットコインは1日で8~10%急落。仮想通貨市場全体で数十億ドル規模の清算が発生した。
関税だけがこの値動きの原因ではなかった。
米連邦準備理事会の独立性への度重なる挑戦や地政学的緊張の高まりなども、市場の値動きを一層激しくした。
政権が現状の路線を維持するかどうかは依然不透明だ。仮にこのまま進めば、一部の仮想通貨投資家は規制支援とマクロ経済リスクのバランスを再考し始める可能性がある。
それでも、すべての仮想通貨が下落したわけではない。
トランプ氏およびその家族は、特にこの分野の拡大による顕著な恩恵を受けている。
市場全体下落の中で大統領銘柄が利益
トランプ氏の投資ポートフォリオは過去1年でより多様化し、特に仮想通貨関連の事業への比重が増した。
こうした取り組みは、氏名を冠したミームコインから分散型金融プラットフォームWorld Liberty Financialまで幅広い。家族もまた、共同あるいは個別にプロジェクトを立ち上げている。
仮想通貨の評価額が下落する中、トランプ氏の個人資産は逆に増加した。
最新のブルームバーグ分析によれば、トランプ家は仮想通貨関連の活動でおよそ14億ドルを得た。現在、デジタル資産は家族の総資産の2割超を占める。
こうした事業は注目を集めている。
トランプ氏がこれらのプロジェクトを進める中、政権は利益相反の可能性について繰り返し問われてきた。
精査が続き、投資家の損失が増大する中、トランプ氏の仮想通貨による巨額の資産は、過去1年で大きな損失を被った多くのトレーダーとは対照的な状況となっている。